ひきこもりマルチリンガルw

低レベル日中英マルチリンガルw ( 育児ブログ反省・カナリア・モルモット・TV・アプリ )

精神病患者の妹として佐世保事件を悼む

長崎佐世保・女子高同級生殺人事件・加害者父の自死報道を
検索していたところ、「逃げた」「無責任」という批判が多く
目に飛び込んでまいりまして、非常に辛い気持ちになりました。
本日は、「二児の親・精神病患者の妹」としての私の
正直な気持ちを個人的な体験からブログらせていただきます。

【 精神病院に入院させるのは容易ではなかった】

まず、何よりも、
お父さんが加害者を精神病院に入れようとしたものの断られた件が
非常に、身近に感じられました。

兄は、もう30年以上前に、亡き父が、ツテを頼って
なんとか入院させたのですが、入院先を探すのが大変だったそうです。
( 当時、私は既に国外でしたので、現場と状況は直接見ておりません。)

入院後、数年がたち、少しだけ、状況が、よくなりますと
病院側から、退院させて、実験的に、サポート付きで、
一人で生活させられないかとの打診がございました。
監視下で、毎日、定時に薬をのんでいる兄を
サポート付きとはいえ、一人で暮らさせるのは無理ではないかと、
私の素人目には思えましたし、何よりも、父が、
こうやって、一旦、退院させてしまったら、
あらたに入院先を探すのは至難、もう、そんな余力は無いと考え
なんとか頼み込んで、結局、
門限はあるけれども、比較的、自由に外出できる開放病棟で
しばらく様子を見る事となりました。

この病院はスタッフの方々も環境も素晴らしかったのですが
それでも、精神病院は精神病院、
個室ではなく、( 確か、個室に長期入院は、できなかった様に思います)
6人の相部屋で、所持品の全てはベッドの下と脇に収納する生活…、
それは、母亡き後、高校時代から、一人暮らしをして来た私にとっては
まさしく牢獄に思えましたので、
兄を退院させてあげたい気持ちも強くありましたし、
国外にいて何もできないのが非常に申し訳なく、
自分勝手だと、つくづく、自分自身を責めました。

それでも、家族の目から見れば、クスリで抑えている以外は、
ほとんど昔と何も変わっていないように見える兄を
「世の中に出す」としたら、絶対、家族が、
そばにいなければ無理なのは、明らかに思えました。
そして、
父にも、私にも、それは、できなかった…というより
父や私にとって、それは、自分達の人生を犠牲にする事であり
誠に自分勝手ではありながら、その道は選ばなかったのです。

共倒れになるのは、明らかでしたから。

その後も、兄は、ずっと、精神病院で暮らしております。
その間、兄の様子を見、兄自身から話を聞き
素晴らしいスタッフさん達に囲まれ団体生活を送るという環境は、
決して「自由の無い牢獄」ではなく
むしろ、「守られている」「安心できる住処」なのだとわかり
兄を引き取れないという後ろめたさが少し和らぐようになりました。

【 一生自立できない患者のためのケア・ホーム】

精神病院の「目標」は、「患者」さんを治癒し
「自立」させる事なのかもしれません。
けれども、
身体的障害で「自立」できない患者さんがいるように
精神的障害で「自立」できない患者さんも、いるはずです。

そんな「自立」できない患者さんが、入院していないとしたら
家族が、その負担を背負っているのだと思います。


この加害者の場合、
今まで、かなりの負担を、お母さんが背負っていた様に思えます。
我が家でも、母の死後、兄の状態は、あっという間に悪化しました。

加害者のお父さんの無責任を責める声は少なくありません。
お父さんに関する詳しい報道は読んでおりませんので
実際に、どうだったか、私には、わかりません。

けれども、お父さんが、金属バットで殴られ大怪我を負った後
なんとか娘を入院させようとしたけれども、
入院先が見つからなかったので、一人暮らしをさせたという点を
「無責任」と切り捨てることは私にはできません。

最も悪いのは
精神病患者の「ケア・ホーム」の様な施設が
絶望的に不足している状況だと思います。

精神疾患には、治療によって、治る場合も多々あるでしょうが、
一生「自立」させては危険な患者も、いると思います。
この加害者は、一生、「自立」させられない患者に見えます。
ところが
今のままでは、
数年で、「自立」させられ、世に出されるようではありませんか?

クスリで抑えていれば大丈夫…と言っても
そのクスリを飲ませるのが既に非常に大変な場合もあります。
一人暮らしであれば、飲まなくなるおそれもあります。

精神疾患を患う人々のケア・ホームは、決して牢獄ではありません。
臭い物に蓋、でも、ありません。
精神病院で働くスタッフの方々は、身の危険と隣り合わせで
( 暴力的な患者さんもいるなか、)
適切な判断とケアのできるプロなので
素人である家族が、民家の中で、世話をするより
はるかに安全で、患者さんにとっても、社会全体にとっても
良い状況になると信じております。

【もし「異常な子」が生まれたら】

「こんな子を育ててしまった」責任を問う声も多くあります。
けれども
生まれつき、精神疾患を持つ子どもは、
絶対にいる、というのが私の考えです。
数が少ないだけ…
身体的障害と違って、一目でわからないだけ…
ではありませんか?

もし、私のところに
そんな子どもが生まれて来ていたら…

私の息子達は「普通」です。
私も、息子達も、兄と同じ血を引いておりますので
なにがしかの危険要素はあると思いますし
実際、次男は、兄から( つまり私のせいで )、
遺伝子的欠陥を受け継いでしまっておりますし、
さらに、出産時の病気の後遺症( これも、私のせい )で、今後も
手術が必要な身体ではありますが
精神状態という意味では「普通」です。

そして、私は、この息子達の
「普通」の部分には何も貢献しておりません。

「普通」に生まれて来たから「普通」なのです。

私の育児方法が良かったわけでもなんでもありません。

もとが「普通」で、
時代・国・学校・地域・友人・親戚…などに
恵まれていたから、普通に育ってくれたのです。

けれども、
もし、生まれて来たのが、
一万人に一人、十万人に一人、百万人の一人…の
「異常」な子だったら?
しかも、その「異常さ」が、
一見わかりにくい「異常さ」だったら?

【 私には石を投げる資格は無い 】

このお父さんが死を選んだ理由に、
「逃げ」の要素も、あったかもしれません。
ただ、
同世代の私から見ると
「死んでお詫び」
という気持ちも強かったように思えてなりません。

「逃げた」と、私は、絶対、非難できません。
私も、逃げていますから。

私が同じ状況だったら、
私も、死を選ぶかもしれません。

加害者のお兄さんには、
決して重荷を背負わず、
逃げたと非難されようとも、逃げてほしいと願います。

このような形で、人を害するという狂気は
償えるような「レベル」のものではないと思います。
もし
加害者が隔離された環境でケアを受けていたら
被害者のお嬢さんが、
こんな形で、人生を中断させられることはなかったと
私には思えてなりません。

お嬢さんの、ご冥福を、お祈り申し上げます。

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